ambient | ja

環境音楽(かんきょうおんがく)は、音楽のジャンル、または思想を表す言葉である。アンビエント音楽、または単にアンビエントと表記されることもある。今日では必ずしも「アンビエント=環境音楽」という定義が当てはまらず、例えば「アンビエント・ハウス」「アンビエント・テクノ」「アンビエント・ダブ」などと他の音楽ジャンルへの拡大がひろく見受けられるが、これらのジャンルのアーティストも以下に述べられるアーティストの影響が認められることが多い。

広義の環境音楽

広義の環境音楽は、音楽のジャンルを示す言葉であり、日常の中に埋没できる静かな音楽を示す言葉として用いられる。この場合の音楽のスタイルは様々であり、クラシックからエレクトロニック、エスニックなどを含む。また従来ならイージーリスニングに分類されたであろう音楽を多く含んでいる。今日これらのうちのいくつかはニューエイジ・ミュージックやラウンジ・ミュージックに分類されている。

リスナーの日常生活においてBGMとして使用され、自己を主張することなく、あるいは無視し得る穏やかなテーマが用いられ、必ずしも音楽の視聴を目的としないが、音楽によってリラックスしたいときに用いられるような音楽を指す場合が多い。

狭義の環境音楽

狭義の環境音楽は、英国の作曲家であり、『ロキシー・ミュージック(Roxy Music,1971年結成)』に参加していたロック・ミュージシャンでもあるブライアン・イーノ(Brian Eno)が唱えたAmbient Musicという音楽思想を示す言葉の訳語であり、このコンセプトに基づいたイーノの一連の作品と、同様のコンセプトによる作曲家達の作品を指す。

後のインタビューにおいてイーノは環境音楽の考え方が、フランスの音楽家エリック・サティ(Erik Satie,1866年-1925年)の家具としての音楽、または家具の音楽(英:Furniture Music, 仏:Musique d'ameublement) に影響を受けたと語っている。しかしながらイーノの環境音楽は、音楽が周囲の雰囲気を積極的に定義付けると言う点でサティの音楽とは異なる。

当時のイーノが環境音楽の例として語ったのが記念碑と不可分の音楽である。何らかのモニュメントとそこに流れる音楽が周囲の雰囲気を決定する。この音楽はその場所でしか聞くことができず、最初から記念碑の一部として作曲されるというものであった。

したがって本来の環境音楽は音楽のジャンルではなく、音楽の作曲・使用方法に関する思想を表す言葉である。この思想は今日の大量生産され消費される音楽とは対極にある考え方である。ジャン・ミッシェル・ジャール(Jean Michel Jarre)がたった一枚だけ製造し、オークションにかけられたアルバム『Music for Supermarkets』(1983年)は、明かにイーノの影響を受けている。またこの考え方は従来の音楽鑑賞方法、すなわち演奏者、またはオーディオ機器の前に座って音楽を聴くと言う行為をある程度否定しているとも言える。 .